第14章 「 怒涛の一日 」 菅原孝支
すっかり暗くなった道を一台の軽自動車が走る。
運転席には真由、助手席には俺が乗った車だ。
他に走る車はなく、長閑な風景が続いている。
「大丈夫」と断ったが、駅まで送ると言い、真由が車を出してくれた。
どこまでも男前だな。
「いやー。まさか、スガが玄関であんなこと言うとは思わなかったわ。」
「面目ない。」
「あはは!おもしろかったしいいけどね。ありがとう。今日は付き合ってくれて。」
「いやいや、こちらこそ、夕飯までごちそうになって…。ありがとうございました。」
玄関での、あの挨拶の後、
「ち!違うの!そこまでは、まだ、考えてないよね?!ね?!スガ!!」
真由のフォローもあってか、
「あははは!!菅原くん、ようこそ、とりあえず上がってくださいな。」
「緊張するよな。気張らなくていいから。肩の力抜いて。」
と、これ以上ない神対応をしてくれた。
その後も、終始優しくて…。
いいご両親だった。
「今日、一日一緒にいて思ったけどさ、スガさえその気になれば、彼女はきっとすぐできるよ。」
「…そうかな…。」
「うん。その気になればね。」
ハンドルを握る彼女は真直ぐ前を見ていて、俺の方は見ていない。
でも、その横顔もきれいだと思った。
今日、1日一緒にいて、真由だってその気になれば彼氏くらいすぐにできると思った。
やっぱり、とても魅力的だ。
明るくて愛嬌のある、親しみやすい性格。
思わず見とれる美しい外見。
真由と一緒に過ごして、好きにならない理由が見当たらない。
高校卒業から10年。
色んな女性を見てきたけど、真由に対するものと同じような感情を持ったことは無い。
“その気になれば、彼女はきっとすぐにできるよ”
その気になれば…か。
「ねー。真由。」
「何?」
「俺がさー。真由と付き合いたいって言ったらどうする?」
彼女の顔が強張るのがわかった。