第4章 「 かたおもい 」 西谷夕
初めて手伝いに行った日、ノヤが私に声をかけたのを今でも覚えている。
「手伝い、ありがとうございます。いつも潔子さん、ひとりで大変そうなので。石井先輩がいて、とても助かってると思います。」
「全然、役に立ててないんだけどね。」
「そんなことないです!本当、ありがとうございます。」
笑顔でそう言うノヤを「かわいいな」と思った。
「じゃあ、まだ部活、あと30分くらいあるので、よろしくお願いします!!!」
「ありがとう。」
練習もしなくちゃいけないのに、私を気にかけて声をかけてくれたんだ。
って気づいたら、優しい人だなって思った。
それまで、めまぐるしく、言われたことをやるのに精いっぱいだった私は
初めて、ノヤがプレイしているところをしっかりと見た。
強いアタックも、サーブも、どんな球でも拾う姿。
バレーに向き合う真剣な顔。
それを見たら、もう、手遅れだった。
なんてかっこいいんだろう。
そう思うと、胸が高鳴った。