第14章 「 怒涛の一日 」 菅原孝支
「ありがとうございました!」
美容師さんに見送られ、店を出た。
「払うって言ったのに!!」
「いや、スーツも払ってもらったのに。さすがに悪いから。」
「気にするなよ!」
「いや、するから!!」
美容室代を俺が払ったことに、真由は納得がいかず、少し怒っている。
「スガのばーか!ばーか!」
「ひどい言われようだな!!」
「この借りは必ず返す。」
「捨て台詞か。」
「スガはいちいち突っ込んでくるなー。」
「真由が変なことばっか言うからだろ?」
「そっか。そうなるのか。」
真由は納得したのか、それ以上追及はしてこなかった。
そこからまた、電車に乗って、真由の家の最寄り駅まで移動する。
「真由は、今は嫁?いるの?」
「いるよ。いるいる。“萌園学園”の“足立くん”。」
「何それ?」
「ソシャゲ。」
「ソシャゲ?」
「あ!無課金だから。」
「そうですか。」
無課金ってことはゲーム?アプリ?のキャラクターなのかな?
漫画から始まっていろんなところに手を出してるのか。
なるほど。
「ねえ、足立くんと俺、どっちが好き?」
「え?あだ…じゃなくて、スガかな。」
「気を使ったね?」
「バレた。」
真由は苦笑してそう言った。
電車はどんどん田舎へと向かっていく。
高い建物が減り、民家が増え、田んぼが増えるにつれて、緊張していくのがわかる。