第14章 「 怒涛の一日 」 菅原孝支
電車は真由の実家の最寄り駅へと到着した。
「よし、降りよう。」
電車を降り、駅の改札を抜ける。
真由の家には高校の頃から一度も行ったことがない。
この駅も、使ったことはなく、初めて降りる駅だ。
見慣れない景色は、緊張感を更に増幅させた。
「それでは、実家に行きます。よろしくお願いします。」
「ご両親、どんな人?」
「え?うーん。普通だよ。」
今まで付き合ってた彼女の家にすら、挨拶なんて行ったことはなかった。
えっと、どうしたらいいんだ?
名乗って、お付き合いしてますって言って…
和やかに会話するだけ?
あ、先に手土産渡すのか?
頭の中でシュミレーションを繰り返す。
「スガ?そんなに緊張しなくても大丈夫だから。」
「いや、うん。頑張るね。」
真由の言葉を受け取りながらも、頭の中はごちゃごちゃだった。
「はい、ここです。」
駅からどれくらい歩いたんだろう。
10分だった気もするし、1時間だった気もする。
鼓動が速くなっているのを感じる。
「お母さん、お父さん、ただいまー。連れてきたよ。」
「あらあら、いらっしゃい。」
「おかえり。おー。まさか本当に男の子を連れてくるとはな。」
「そりゃ、連れてくるでしょ。」
玄関を開け、真由が声を上げると、ご両親が出迎えてくれた。
あ、あ、あ、あいさつ!!!!!
「あの、えっと。僕、菅原孝支と言います。娘さんを僕にください!!!」
「ちょっと、スガ?!」
ああ、挨拶。できてよかった。
ほっとした俺の目に飛び込んできたのは、慌てた様子の真由と、驚いた様子のご両親。
緊張感から少し解き放たれた俺は、自分が言ったことを思い返す。
あれ?
待って…。
俺…間違えた!!