第12章 「 同窓会 」 澤村大地
『石井さん、園芸部なの?』
後ろから声をかけられ、振り返るとジャージ姿の澤村くんがいた。
『うん、そうだよ。』
『いつも、手入れしてるよね、花壇。』
『うん、花がきれいに咲くと嬉しいし。』
私がそう言うと、いつものように澤村くんは優しく笑う。
私は、この優しい笑顔が大好きだった。
『それは、なんの花?』
澤村くんは花壇を指さした。
まだ、蕾もつかない小さな芽。
『えっと“ペチュニア”だよ。』
『へー。なんとなく聞いたことあるな。』
『これからかわいい花を咲かせるんだよ。』
『そうなんだ。楽しみだな。なんで、この花を選んで育ててるの?』
『ああ、花言葉が好きで。』
『へー。どんな?』
『“あなたといると心がやわらぐ” 誰かにとって、私がそうなれたらいいのに…って願望を込めて。』
そう言うと、澤村くんはまた、優しく笑い
『きっとなれるよ。』
と言ってくれた。
思い出すと恥かしい。