第11章 「 さんかく 」 影山飛雄*月島蛍
「おい、月島。」
「なに?」
部活が終わり、部室で帰り支度をしていると、影山が僕に声をかけた。
「お前、真由のこと、どう思ってんだよ。」
うわ。青春っぽい。
まさか、影山にこんなこと聞かれる日が来るなんてね。
「別に。知人?」
「は?!」
僕の言葉に影山の機嫌が悪くなったのがわかった。
「俺は、真由に言ったから。」
何を言ったのかは、大体想像がつく。
「そう。で?」
僕は極めて冷静に答えた。
「…お前も、よく考えろよ。バーカ。」
そう言うと、影山は部室から出て帰って行った。
何アレ?
影山に「バカ」って言われるの、心底腹が経つ。
僕は、石井さんが幸せになるなら、と。
ここ数日、石井さんをわざと、冷たくあしらった。
そうすれば、影山が動くと思ったから。
で、狙い通り動いてくれた。
これで、いい。
僕の計算通り。
これで、石井さんは晴れてお互いの気持ちを確認して、付き合えて。
僕の仕事はこれでおしまい。
彼女が幸せなら、それでいい。