第11章 「 さんかく 」 影山飛雄*月島蛍
僕が、石井さんに気持ちを伝えてから1週間。
石井さんは、僕の気持ちを知り、少しは意識をしてくれているようだ。
今まで、僕の言動で照れたり、動揺することはなかったのに、見たことのない表情が見られる。
でも、だからといって、僕のことを好きになってくれているわけではない。
それは当たり前だ。
石井さんは影山のことが好きなんだから。
「石井さんは、どうなの?あれから、影山とは。」
「え?えーっと…。」
「え?何?今さら、気を使ってるの?」
「つかうよ!それは。」
「いいのに。別に。影山の話してるときの石井さんの顔、好きだよ。」
僕がそう言うと、「なにそれ。」と呟いた。
「で、どうなの?」
「・・・どうもこうも。現状維持です。」
「そうなんだ。影山、バカだな。」
石井さんのことが好きで
石井さんも影山が好きで
ちゃんと両思いなのに。
勘違い?すれ違い?
何でか石井さんが僕のことを好きって勘違いしてるみたいだし。
もったいない。
「まあ、でもいいんだ。飛雄、好きな子いるって言ってるし。その子といることが飛雄の幸せなら、私はその方がいいかなって思う。」
「何回も言ってるけど、影山は石井さんのことが好きだと思うけど。」
「ツッキー、いくら私でも、もうそんなの真に受けないからね!」
僕にとってはそれは、好都合だけど。
「じゃあ、どうするの?」
「うーん。まあ、このままかな。飛雄とは今までより少しだけ距離を取って、幼馴染として一緒にいることにする。」
石井さんは笑いながら言った。
その顔はいつもの笑顔と違い、どこか物憂げだった。
僕だって、石井さんには誰よりも幸せでいて欲しい。
それは、決して揺らぐことのない僕の気持ちだった。
「じゃあ、僕は、石井さんが幸せになるための手助けをするよ。」
僕がそう言うと、石井さんはクスクスと笑った。
僕は、石井さんが幸せなら、近くにいられなくてもいい。