第10章 「 終わりと始まり 」 赤葦京治
「結構混んでるね。」
「まあ、土曜日だしね。」
「チケット、取れるかな~?」
「あ。さっきもう買っておいたから、大丈夫だよ。」
そう言うと、赤葦くんはチケットを取りだした。
「え?!すごい!できる子すぎるでしょ。」
「何それ。」
私の言葉に赤葦くんがくすくすと笑った。
チケット代は何度払うと言っても受け取ってもらえず。
それならせめて、と、私はドリンク代を払った。
劇場に入り、座席に座る。
「いよいよだね。」
耳元で聞こえる赤葦くんの声。
静かな場所で改めて聞くと、意外と低くて思わずドキッとしてしまう。
そんな気持ちを悟られないよう、平静を装って「そうだね。」と返事をした。