第9章 「 ひみつのノート 」 及川徹
そして、今日は卒業式だ。
3年間、特定の友だちを作ることもなく過ごした高校。
大した思い出もなく、卒業式が終わると、私は真直ぐ家に帰った。
一方で及川くんは、バレー部の後輩たちに囲まれていた。
後輩たちは泣いている様子だった。
慕われていたんだな。
卒業してしまえば、毎日及川くんの姿を見ることすらできない。
でも、それでいい。
見なくなれば、そのうち忘れて、気持ちも薄れていくはず。
私はそう思いながらも、最後に…と、及川くんからもらった手紙を1枚1枚、読み返した。
私の高校3年間の1番の思い出だ。