第9章 「 ひみつのノート 」 及川徹
そこで、初めて彼女が書いているものを目にした。
なんというか、まるでプロが書いているような漫画。
本当にうまい。
すごい。
すると、彼女は急に顔を上げ、俺の顔を見た。
「え?!及川くん?!なんでいるの?!」
「あー…。今日、朝練休みなの忘れてうっかり早く来ちゃったんだよねー…。」
とっさについた嘘。
本当は、君に会いたくて来たんだけど。
「へえ~。そうなんだ。」
彼女はそう言うと、少し慌てた様子でノートを閉じた。
「ねえ、それ、真由ちゃんが書いてるの?」
俺がそう言うと、彼女はノートを持って教室から飛び出してしまった。
えー…。
俺、気持ち悪かったかな・・・。
初めて喋ったのに、下の名前で呼ぶとかもないよな…。
嫌だったかな…。嫌だっただろうな…。