第9章 「 ひみつのノート 」 及川徹
「あれ?でも、今日は書かないの?」
「うん。もう、今日はいいや。」
及川くんが見るページは少ない方がいい。
今日は書かない。
「じゃあさ!俺とお喋り「却下!」
「だから、言い終わってない!」
「っていうか、朝練あるんじゃないの?及川くん。」
私がそう言った瞬間、教室の扉が勢いよく開き、つり目で髪の毛つんつんの男の子が入ってきた。
かと思うと、それはそれは大きな声で及川くんの名前を叫んだ。
「おーいーかーわー!!」
「あはっ!岩ちゃん、おはよー!」
「何やってんだお前!主将がサボってんなよ!」
「ごめーん!岩ちゃん。」
“岩ちゃん”と呼ばれた男の子は私に軽く会釈をすると、及川くんの首根っこをつかみ、引きずって歩き始めた。
「じゃあ、またね~。真由ちゃん。」
及川くんはひらひらと私に手を振る。
あの状況で自分で歩こうとしない及川くんがすごいと思うよ、私。