第9章 「 ひみつのノート 」 及川徹
私は毎朝、7:15に学校に着いて、誰もいない教室で少しずつ趣味のマンガの下書きをしていた。
いつも、私の次に来る子は決まって、7:48きっかりにやってくる。
その約30分間、マンガの下書きをし、家に帰って少しずつペン入れをしていく。
それはもう習慣で、私にとっては当たり前のこと。
友だちのいない私にとって、それが唯一の楽しみだった。
ところが、昨日はその「当たり前」の日ではなく、ごく稀に訪れる「例外」の日だった。
いつものように7:15に学校に着き、いつものように自分の席でノートを開いてマンガを書きすすめる。
しばらくすると、視線を感じ、見上げると、この男、及川徹がいた。
時計を見ると、時刻はまだ7:35。
「え?!及川くん?!なんでいるの?!」
「あー…。今日、朝練休みなの忘れてうっかり早く来ちゃったんだよねー…。」
「へえ~。そうなんだ。」
私はそう言いながらノートを閉じる。
しかし、及川くんはすかさず、
「ねえ、それ、真由ちゃんが書いてるの?」
ノートを指さして言った。
ひそかな趣味がバレたパニックで、私はノートを持って教室を飛び出し、チャイムが鳴る直前まで女子トイレで過ごした。
そしてその間に冷静になって色々と頭をフル回転させた結果「しらばっくれる」方法を選択した。