第4章 復帰と合宿とお猫様
買い終わった下着を皆で見せ合って〝これで月島君もイチコロだ!”とか〝私は影山君も良いと思う”とかガールズトークしながら3人で帰る。
帰り際に2人にお礼を言った。
『2人共ありがとね。いっぱい考えてくれて。部活あって2人と中々遊びに行けないから今日はすっごい楽しかった!
本当にありがと!』
「「可愛いやつめーーーー!!」」
そう言ってぎゅうぎゅうと抱きしめてくれた2人と別れて一人マンションまで戻る。
マンション前には蛍がヘッドフォンをして花壇に腰かけているのが見えた。
忘れ物したのかも!と慌てて駆け寄ると蛍がこちらに気付き目線を上げる。
『蛍!どうしたの?私忘れ物した??』
「いや。別に。……きちんと帰ってくるか心配になっただけ。」
…??
夜遊びしないかってことかな??
「……変な人に襲われないかってことに決まってるデショ。」
『そっちか!!』
そんな間抜けな私の反応に蛍の微笑が見えた。
蛍の垣間見える優しさにホッコリするとその視線が私の持っているショップ袋に映ったのが分かる。
「何、買ったの?」
その純粋で単純な質問に心底焦った。
ドギマギを地でいく私に蛍はニヤニヤとしている。
もしかしてこのブランド知ってる?そういえば最近CMでも見るし…
「ま、今度の合宿で見せてくれるんだろうから楽しみしておこうかな。…他の人に見せたら許さないけどね。」
『やっぱり知ってたーーーーー!』
そんな掛け合いをし終わって蛍が立ち上がる。
「じゃあ帰る。」
『あ、うん。ごめんね。寒かったでしょ?ありがとう。』
私を気遣い一緒に帰っていないにも拘らず待ってくれていた蛍。
こそばゆいこの感情を持て余していると背中を向けて歩き始めていた蛍が振り返る。
「そういえば忘れ物してた。」
『へ?』
そう言って少し近付き蛍は屈んでキスをしてきた。
触れるだけの優しいキス。
そしてその唇の冷たさにビックリする。
春とはいえ宮城の夜はまだ寒い。こんなに寒い中待ってくれたんだと実感した。
満足気に微笑み、またくるりと背を向けた蛍に、不意打ちを食らったはずの私は冷静だった。
この自分が彼に持ち始めた感情に名前を付けるとすればそれは……
そろそろ鈍感な私でも答えが出そうだと感じた夜だった。