第4章 復帰と合宿とお猫様
放課後着替えて視聴覚室前で旭さんを待っていると、大きな旭さんがこちらに来た。
なんで視聴覚室?という顔で来た旭さんに微笑みを返すと、音で気付いたであろう彼の顔が少し曇る。
そんな旭さんの後ろに回り、彼の背中を押しながら体育館への渡り廊下を2人で無言で歩く。
そして彼の目の前には日向と影山君の姿。
言葉なんて必要じゃなかった。
私の軽い言葉より、目から飛び込んでくるキラキラとしたバレーの方がよっぽど彼の心を揺さぶると思った。
入学したての私がそう感じたように。
すると日向が叫んだ言葉に旭さんが驚いた顔をした。
日「よっしゃー!対ネコ戦も速攻決めるぞーー!」
その言葉に驚いた旭さんに私が驚く。
そういえば先輩方もこの間言っていたけど、烏野バレー部には音駒との因縁があるとかなんとか。
ここ数年面識はないはずなのに、数100キロ離れた懐かしの音駒という学校にこんなに他の学校の人が反応してくれるのが少しくすぐったくなる。
すると私達の近くから精悍なキャプテンの声がした。
澤「ゴールデンウィーク最終日に、練習試合なんだ。」
旭「ゲッ!!!!」
澤「ゲッてなんだ!!お、おい!逃げるな!!」
旭「だってお前怒ると怖いんだもん!」
澤「今別に怒ってないだろう!!」
そう言いながら少し青筋の見えた澤村先輩と、逃げようと渡り廊下の手すりに足をかけたままの旭さん。
そんな微笑ましい2人を邪魔しないように私はそっとその場から離れて視聴覚室前まで引き下がった。
澤「…全くお前はデカい図体して相変わらずへなちょこだな!西谷と対局にもほどがある!」
旭「…も少し言葉をオブラードに包めよ…」
澤「安心しろ。スガは勿論、西谷も問題ない。お前と違って懐が深いからな。
…1月もサボったこととか、なんか気まずいとか、来辛いとかそういうの関係ないからな。
まだバレーが好きかもしれないなら、戻ってくる理由は十分だ。
それからな。エースに夢を抱いているやつとか、お前を気遣って視聴覚室前まで隠れているやつもいるんだからな。」
---ば、バレてる。
そうこうしている内に少し悩みながら旭さんが歩いていくのを見送った。
澤「で、ちょっといいか?」
その背中を見送った後澤村先輩に話しかけられ、おずおずと渡り廊下に出て行った。