第4章 復帰と合宿とお猫様
口早に蛍に伝えてからインターホンのボタンを押す。
『旭さん!それ私のキーホルダーなんです!ありがとうございます!すぐ行きます!』
旭さんの返答も聞かずにボタンを押し、寝室を出てボタンを留めながら玄関へ向かう。
すると蛍に呼び止められた。
その手には私のブレザーが持たれている。
「そんな薄着で男に会いに行かないで。」
その言葉にキュンとするが、旭さんをこれ以上待たせておく訳にはいかない!と蛍に反論する
『すぐだから大丈夫!』
私のその言葉に眉間にしわを寄せた蛍に、後ろから左腕を引っ張られて真正面から抱き留められる。
そのまま少し屈んだ蛍は首筋に唇を寄せる。途端に強く吸われて離れた蛍はニヤッとする。
その笑みから全てを読み取った私は玄関の姿見に自分の姿を映し出す。
ブラウスの襟の脇に赤いキスマークが一つ。ちょうどリボンでは隠れないような絶妙な位置に付けられたそれの真意に気付く。
「テレパシー??」
そう言って笑う蛍からブレザーをふんだくってしっかり着込んで首元を隠す。
『嫌な奴、嫌な奴、嫌な奴!』
気分はカントリーロードの雫ちゃんになりながらエレベーターで下に降りる。
下に着くと旭さんの姿が見える。
その強面に近所の方は青ざめた顔で距離を取って歩いている。
そんな姿に失礼ながら和みつつ彼に走り寄る。
『旭さん!』
「あ、おう。ごめんな。こんな遅くに家に来て。今日昨日座っていた所にキーホルダーが落ちてて。でもよく考えたら君の名前知らないし、バレー部に顔も出せないから家しか分かんなくてさ。」
『いえ、とても大事なものだから助かりました!本当にありがとうございます!!!
ところで私ってば自己紹介もしていなかったんですね!すみません!私、と申します。1年4組です。改めてよろしくお願いします!』
「あ、ああ。俺は東峰旭。3年3組だ。」
『え!?旭さんって名前なんですか!?てっきり苗字かと思ってて!旭承太郎!!みたいな!わーーー!馴れ馴れしくてすみません!!』
「いいよ。別に。俺もって呼ぶし。スガなんて俺の事シャフスって呼んでたんだよ?酷いだろ?」
2人で笑いながらシャフスって似合うなぁと思っていると後ろのエレベーターが開いた。振り返るとそこには蛍がいた。