第4章 復帰と合宿とお猫様
『わわ!今のなし!影山君に何言ってるんだろう、私。』
「俺も…その気持ちはすごく分かる。でもいつまでも引きずっていられないって思った。それに俺には新しく仲間ができた。信頼できる、全てを任せられる仲間が。」
『そっか。影山君はもう未来を見据えて歩き出せたんだ。
私はまだ仲間が見つからなくて地べたに這いつくばったままだ。
過去ばかり振り返って…嘆いても仕方ないのに。』
「言っとくけどなぁ。お前〝も”烏野の仲間なんだからな!!これ以上に信頼できる仲間を求めるなんて欲張りだぞ?」
そう言って影山君がふわりと笑った。
その笑顔に胸がキュッと締め付けられるような気持ちに襲われた。
『なんか、今キュンとした!これって胸キュン?』
「はぁ!?お前それ俺に言うか!?ば、バカじゃねーの!?」
『あ、ごめん。なんか確認したくなっちゃって』
そう言ってふふっと笑うと、影山君も釣られて笑い出す。
影山君って王様…というか俺様な人だと思ったのになんか違ったみたい。
こういうのがクラスの子が言ってた〝ギャップ萌え”っていうんだろうか。
今度蛍に聞いてみよっと。
そこまで考えるとふと視線に気付く。
さっきまでいなかったはずの蛍が山口君と一緒に部活に来ていた。
『あ!蛍!あのね…ちょっと聞きたいんだけど…』
そう声を出して今しがた考えた〝ギャップ萌え”を聞こうとすると目の前の影山君の顔が曇った。
「行くな、もう少し俺のモノでいろよ。」
そんな衝撃的な言葉が影山君の口から聞こえたと思ったら今度はゆうちゃんの大きな声が聞こえる。
「危ない!!!」
その声が聞こえたと思ったら前にいたはずの影山君が一瞬で目の前まで来ていて、影山君の香りに包まれてそのまま後ろに倒れこむ。
飛んできたボールから庇ってくれたんだと知った時にはもう床の上で。
目の前いっぱいに影山君。
彼の右腕に身体は包まれて、彼の左手は床を押しているような状態。
これ、あれだ!これもクラスの子が言ってた床ドンだ!
私、ものすごいスピードで大人の階段上ってる気がする!
そう思いながら影山君に礼をする。
『ありがとう!助かっちゃった。なんか王子様みたいだね。』
その言葉に彼の目が少し見開かれる。
そして一言。
「やっぱりお前を月島に渡したくない。」