第3章 仲間と4強と守護神
翌日、勝手に旭さんと帰ったことに対して〝危機感が足らない”〝もしもあの人が悪い人ならお持ち帰りされて無理矢理…”等と朝の会話としては到底ふさわしくないお小言を蛍から言われながら登校する。
『そんなこと考える蛍が一番やらしいんじゃ…』
「何?何か言った??月島君に無理矢理抱いてほしいって???」
私の得意(?)なその不用意な一言で蛍の眉間の皺と声が一回り低くなる。
一瞬考えそうになって必死で頭を振る。
『ダイジョウブデース。オコトワリシマース。』
「……僕も結構モテるんだから、いつまでものことばっかり追いかけていると思ったら大間違いだからね。」
その言葉に一瞬冷水を浴びたように感じる。
確かに、そうだ。
ずっと蛍と当たり前のように登下校していたけどこれもいつまで続くかなんて分からない。
そんな当たり前なことを今更思い出す。
蛍に告白されて、付き合おうと言われて答えが出ないまま、ズルズルと私は蛍の優しさに甘えているんだ。
そこまで考えが至った時にこっそり隣の蛍を盗み見る。
スラッとした長身に整った顔。長いまつ毛にポーカーフェイスな表情。指も細くて長くてとっても綺麗。
閉じられている薄い唇からはいつも嫌味が飛び出してくる。
そんな唇と私は幾度となくキスを交わした。…いや4回か。
軽いキスから深く濃厚なキスまで。
今考えると〝お礼はキスで”なんてすごいこと言っちゃったなぁと自分でも恥ずかしくなる。
蛍の顔を観察していたはずが、視線は蛍に合わせたままほとんど蛍を見ずに考え事に耽っているとふと視界が暗くなる。
あ、やばい。
そう感じた時には既に私の唇に蛍の唇が上から飛来していた。
半開きになっていた唇は蛍によってカプッと上から包み込まれ、2、3回啄まれたらチュッとリップ音を立てて離れて行った。
『…っっ!!!!!』
途端に絶句する私に蛍は飄々と言った表情。
キスは何回もしたけど今回は場所が場所だ。なんていったってここは通学路。
朝、神聖なる学び舎に向かって勉学に勤しむ学生が心清らかに歩行する道だ。
そこまで考えた時にふと周りを見渡すと今居るここは普通の道から少し離れた死角になっているところだと気付く。