第3章 仲間と4強と守護神
この間会った土手に行くとやっぱりあの“旭さん”がいた。
後ろ姿だけど分かるあの巨体に向かって呼ぶ。
『旭さん!』
そう呼ぶと旭さんは驚いたようにこちらを向く。
ちっちゃく手を振りながら小走りで近寄る。
「俺、名前を教えたっけ?」
『あぁースガさんに聞いて、ヒゲで強面の乙女は旭さんだって。』
「えぇっ!スガ、酷すぎる…」
ふふ。と笑いながらこの間の礼と、他愛のない話をする。
2人でのんびりと話しているとすっかり辺りは暗くなり、周りを色んな部活を終えたであろう人が通り過ぎていく。
「こんな遅くまでごめんな。送ってくよ。」
『いえ、家も近いですし、流石に申し訳ないからいいですよ!』
「俺に付き合って遅くなったんだからいいの。それに自分で言うのもなんだけど、俺といると怖い人は寄ってこないよ。
…普通の人も寄ってこないけど。」
カッコイイと思ったらヘナチョコなセリフ。そんなチグハグな旭さんが可愛くて仕方ない。
あと面白い。めっちゃツボ←
大きな旭さんと並んで歩くと本当になんだか安心して歩けた。
あれだ、ちょっとしたモーゼ気分!
ふと旭さんが神妙な面持ちになって話す。
「今日さ、バレー部の話をしにきたんだろ?でも気を使って何も言わなかったんだろ?」
『うーん。それはどうでしょう。
実は私、西谷のいとこなんです。』
ヒュッと隣で息を飲むのが分かる。
それでも構わず話し続けた。
『今日ゆうちゃんからも話を聞いて、もう一度旭さんから旭さんなりの気持ち聞きたいなぁって思ったんです。
でも話したくないならそれでいいし、話したかったら話してくれるかなぁっていう曖昧な気持ちで来たんです。
当事者じゃない私に出来る事はそれだけで。
まぁ、もう1ヶ月間悩んで答えは出ているだろうし、あとはキッカケかなって思う気持ちもあるんです。』
そんな私の勝手な思いに旭さんはゆっくりと今度は力強く頷いた。
その瞳には光が宿っているのを私は確かに確認した。
マンションの下で旭さんと別れて、その後ろ姿を見送る。
あの人なら大丈夫。
私がなにか出来たわけじゃないけど、エースに対して確信に似た気持ちで胸がいっぱいになったのだった。