第2章 新学期と新生活と入部
そう誰にも聞こえないように呟かれる。
そこまで聞いてようやくメガネの奥の自分の目にうっすらと透明の膜が張っていたことに気が付いた。
そしてその静まりきった雰囲気を変えるように蛍がまた一言。
蛍「まぁ昔話はその辺にしてそろそろ田中さんのカッコいい姿見せてキャーキャーと言われる姿見せてくださいよ。」
田「…なっ!テメー!見とけよ!ほ、ほら、!よろしく頼む!俺に夢を見させてくれ!!!」
蛍&山「「ぷっ」」
田「おいコラ。月島、山口コラ。喧嘩売ってんのかコラ。見とけコラ。」
そう言いながら凄い怖い顔をしている田中先輩にくすりと笑ってメガネを外して、こっそり涙を拭いた。
ばれないように明るい声出すように努める。
『じゃあトス挙げるので、ときめかせて下さいね!田中先輩!』
田「せ、せ、せんぱい!!!シリアスからの不意打ちの天使キターーーーーー!!しかもメガネ外すと可愛さ上がってるーーー!!!」
ギャーギャーと騒ぐ。そんな明るいやり取りにホッとした。
蛍から離れる時に小さく小さくお礼を言い、離れる。
すると蛍からまた誰にも聞こえないように一言。
「くれぐれも惚れすぎないでよね。」
その一言がなんだか可愛らしくてぷっと吹き出しながら、今度こそ田中先輩の元に向かう。
そしてもうネットが外されたコートの中で田中先輩にトスを挙げる。
ゆっくりとしたモーションからの力強いスイングに信じられないスピードで壁に叩きつけられるボール。
その激しい音と共に発せられる私の声。
『カッコいいーーーーーー!!!』
その言葉に嬉しそうに田中先輩が振り返った時にはもう既に彼の姿は眩しくて見られなくなっていた。
『ま、眩しいーーー!!!!』
顔を真っ赤にして顔を手で覆ってしゃがみ込む私にここぞとばかりに田中先輩が近寄ってくる。
「もっと!もっと!」
『眩しいーーーー!!眩しいです!田中先輩!直視できないです!!』
「なんていう良い響きだ!俺は今幸せを噛み締めている!さぁもう一度!、もう一回だ!」
そう言われてもう一度指の隙間から田中先輩を見る。
『もう無理ですーーー!直視できません!!やめてーー!』
「はっはっは。なんていう良い気分なんだ!これ、ハマる!!もっとだ!!」