第2章 新学期と新生活と入部
今日は本当に私は悪くなかったのでアイアンクロー以外はお咎めなしだった。
でもまたポツリポツリとさっきの私の過去について聞かれた。
「やる気あったんだね。意外。しかもベストリベロって聞いてない。」
『聞かれてないから言ってない。』
蛍の言い方を真似すると〝は?何その言い方?”という顔をする。
やばい!と焦って正直に白状する。
『だって蛍は、やる気あるとか馬鹿じゃないの?って言いそうだし。絶対共感してくれないと思ったからさぁー。』
「確かに全く以て理解出来ないデショ。たかが部活に、さ。」
『むぅ。いいもん。いつか蛍にも理解出来る時が来るよ。そしたらもっとバレーが愛おしくなるよ!覚悟しといてね!』
「なにそれ、のくせにムカつく。丁度家に着いたし今日は上がっていくから。」
家に上がると言い張る蛍を今日も言いくるめて帰らせてホッと一息。
でもそんな他愛のない会話が楽しくて日々が輝くようだった。
次の日からサッカー部の彼はヒゲの人の脅しのお陰で私にちょっかいを掛けなくなった。
蛍のどす黒いオーラの効果かもしれないけど。
そうしてそれからは平穏な日が続き、蛍とは一緒に登下校するのが当たり前になっていた。
そんなある日。ついに蛍が部活に初招集の日となった。
イコール私のバレーのマネージャー初仕事の日でもある。
私の弱点の対処法として蛍が取り出したのは何の変哲もないメガネだった。
『メガネ??私、目が悪いわけじゃないけど?』
「これ、度が入ってないやつ。パソコンのブルーライトも遮るんだってさ。色々調べて見たらこれが効くらしいよ。
体育館に入る時は必ずこれかけていきなよ。」
(ほんとは気持ちの問題だから、おまじないだけで効くらしい。結構単純だし、これで結構顔隠せるからいらない虫予防になって一石二鳥だ。それに更に僕とお揃い。ペアルック。我ながら美味しい話過ぎる!)
そんな蛍の親切心と老婆心と私情を知らずに私は暢気にそのメガネをかけてルンルンとスキップを踏むのだった。
そしていつの間にか放課後になり、蛍と山口君と私の三人は体育館の前まで来た。
これから新しい世界の幕が上がるのだ。
嫌でも緊張する。
そんなドキドキを抱えながら私達3人は新世界に飛び込んだ。