第2章 新学期と新生活と入部
どこまで聞かれたのだろう、とか教室にいなかったから探しに来てくれたんだなぁとオロオロとしていると蛍の手に私の鞄が握られているのが分かった。
「いなくなったと思って必死に探しに来たら暢気に昔話してさ。
てか、その昔話知らなかったんだけど。良い度胸だよね。僕に隠し事なんて。覚えといてよ。」
そう早口で捲し立てる蛍はサッパリ口を挟む隙を与えない。
旭「あのさ。この子サッカー部の子に追い掛け回されていたみたいだよ。腕まで掴まれて引きずられていたし。」
蛍「は!?!またアイツ??油断も隙も無いんだから!明日アイツ絞めとかなきゃ。」
怖ッ!!と蛍の真っ黒オーラにたじろぐ。
隣のヒゲの人も冷や汗をかいて真っ青だった。…意外にも小心者??と思っているとまたあの質問が飛んできた。
旭「で、2人は付き合っているのかな??」
『え!?いや!そんなことはないです!!決して!あぁ!蛍に怒られるのですぐに訂正を!!!!!』
慌てる私を尻目に蛍から発せられた言葉は私を黙らせるのに十分だった。
「僕としてはそうしたいんですが、鈍感で優柔不断なコイツからは明確な答えが返ってこなくて困っています。
更にドンドン無駄にバレー部の人と出会って求愛されていく姿なんて見てられません。
もうバレー部のマネージャーはやめさせようかと思っているところデス。」
『…!!!!』
旭「ははは…。見せつけるねー。でも俺にもまだチャンスはあるってことかな?しかもバレー部なんだな。
もしも俺が戻る気になったらさ、その時はよろしくな。」
蛍「じゃあ戻ってこなくて結構です。コイツは僕のものになる予定なんで。
ホラ、行くよ。もう願書出したし。」
そう言って私の鞄を持ったまま歩き出す蛍を慌てて追う。
一度振り返り、後ろに座ったままのそのヒゲの人に軽く会釈すると手を挙げて応えてくれた。
その様子に気付いた蛍はまた私の頭を掴んで前を向かせる。
『ちょ、アイアンクローやめてぇぇー』
そんな悲痛な私の叫びに後ろに座っているヒゲの人が微かに笑った気配がした。
勿論アイアンクロー中の私はそれを確認する事のないまま、帰路についた。
『いい加減…アイアンクローを…』
「ダメ。前科がありすぎる。信用ないから。」
ひでぇ言われようだと思うのは気のせいだろうか←