第2章 新学期と新生活と入部
大きな人に助けられ散々お礼を言って、その人が座った土手の横に座る。
全力で走りまくったから力が抜けて座り込んだという表現の方が正しいけど。
ここ2日、やたらバレー部の人と関わりがある気がする。
そして私は不用意にその大きな彼に『バレー部の人ですか』と質問した。すぐに曇るその顔に少しだけやってしまったと感じたけど、ここで会ったのも何かの縁だと思って踏み込んでみた。
『バレー嫌いなんですか??』
「嫌いってわけじゃないけど。もう俺にはやる資格ないんだ…」
ポツリポツリと話してくれるその思い出に思わず胸が苦しくなる。
そして自分の経験と重なりフラッシュバックする。
「俺、初対面の君に何言ってるんだろうね。」
『わ、私は!リベロです!正確に言うとリベロ〝でした”』
ヒゲの彼のしまったという顔が目に入るが構わず続ける。
『中学最後試合。私は宮城へ行くことも決まっていたし、すごく気合入っていて、でも周りは違っていたんです。
別にどうせ負けるという雰囲気が蔓延していて私一人が張り切っていても意味なんてなくて。
それでも頑張ってとにかくボールを拾いまくって。
相手のマッチポイントになった時でも諦めずに拾って、スーパーレシーブも出た。でもその私の拾ったボールの先には誰も居なかった。
皆終わりの挨拶に向けて髪を整えていたんです。
結局私はベストリベロ賞を貰ったけど全然嬉しくなかった。
共に喜べる仲間が居なかったんです。アンタはいいよね。って言われたんです。
笑えますよね。頑張っても報われない。そんな想い。
私は良い仲間に巡り合えなかった。でもあなたはどうですか?
良い仲間が居るのに勝手に諦めないでください!
私たちが命を懸けて繋げたボールをあなたが勝手に諦めないでください!』
そう言いたいことを言ってハッとしてヒゲの彼の顔を見ると唖然とした顔をしていた。そして眉をへの字に下げながら言う。
「困ったなー。その時さ、そのうちのリベロにも同じこと言われたんだよね。」
なんとなく、そのリベロの事を思い起こす。
その姿は紛れもなくゆうちゃんだろうと私は確信に似た思いを感じた。
そこまで話して私は後ろからの視線に気付く。
さっきのサッカー部の彼かと思ったら、そこにいたのは先ほどまで会いたいと思い焦がれていた蛍だった。