第2章 新学期と新生活と入部
その勝ち誇った外面(ソトヅラ)に私は言葉を失くす。
途端にキャーーーという彼女たちの黄色い声援と私を横から〝このこの☆”〝愛されてるー☆”と嬉しそうに冷やかす声に包まれる。
一から説明するのもしんどいし、上手く端折れず余計な事を言いそうなのでもう放っておいた。
その一件から私達は〝明言はしないけどほぼ黒に近いグレーな関係☆”として認定された。
そんな昼休みも終わり、気付くと放課後になっていた。
「バレー部に入部届けを出してくるから教室で待ってて!間違っても付いて来ないでよ!昨日みたいになるから信用ならない!」
そう失礼なような、心配のような言葉を掛けられ私は一人教室で待つ。
こんな時に限って厄介ごとは降ってくるのだ。
「さん!何してるの??」
そう言ってやってきたのは昨日のサッカー部の人。
その目からまだ諦めていない事を悟る。
この人は厄介だ。しかも昨日みたいに腕を掴まれたらきっと逃げ出せない。
私の中の警報がけたたましく鳴り立てる。
その手がまた私の方に伸びてきた途端弾かれた様に鞄も持たずに走り出す。
体育館の蛍に助けを求めたいけど、昨日も蛍に付いて行っただけだから体育館の場所が分からない。
とにかく後ろを振り切るために走る。
気付くと学校の隣の土手まで来ていた。
そこでついにグッと腕を引っ張られる感覚に襲われる。
「やっと捕まえた。酷いなー。逃げなくてもいいじゃん。丁度グランドも近くなったし。さぁ行こうか?」
掴まれた瞬間にまた全身の鳥肌が立つのが分かる。
『やめて!離して!』
一生懸命拒否するも全然聞く耳を持たないその人にズルズルと引っ張られる。
もうだめだ!と泣きそうになった途端に、その人と私の間に大きな人が割って入った。
「嫌がってるよ。止めたげなよ。これ以上何かするなら痛い目見るよ。」
そう大きな人が発すると、その人はそそくさと逃げ帰っていった。
私は掴まれて赤くなった腕を擦りながらその人にお礼を言う。
大きくて長髪で、ヒゲで……ん?ヒゲ?
どう見ても高校生に見えないけどうちの制服を着ている人に私は混乱する。
「大丈夫??怖かったよね。ああいう人もいるんだなー。俺も実は怖かったよ」
そう言って笑う彼の笑顔に私はうっかりときめいてしまった。