第2章 新学期と新生活と入部
次の日、学校に行こうと思って家を出ると家の下には見覚えのある長身の彼が立っていた。
もしかして待っていてくれたのかと少し小走りに彼の元に向かうと第一声は〝遅い。”だった。
もともとそんなに遅く出かける方ではないけど、めざましTVのきょうのわんこは私にとって最大限の楽しみなのでそれを見てからじゃないと家を出られないのだ。
足早に前を歩く蛍に今更わざわざ待っててくれたのか聞くのは野暮だから聞かなかった。
そしてその背中に一生懸命わんこの魅力について話しかける私であった。
そんな私に蛍は結局弱点の対処法が見つからなかった事などをぽつりぽつりと話してくれた。
教室に着くと、昨日より更に多くの男の人が教室に来ていた。
またマネージャーの勧誘だ。
そこで私は一生懸命伝える。バレー部のマネージャーになる予定であること。
それでもまだ〝予定”なら見に来てくれれば気が変わるかも!と全然引いてくれない。
特に昨日のサッカー部の人なんて全く動じない。むしろグイグイ来る。
すると限界に達したのか蛍が重い口を開く。
「コイツ。もううちのバレー部のモノなんで。諦めてクダサイ。周りの迷惑になるんでお引き取りを。」
そう言った蛍からはあの特有の有無を言わさないオーラが長身と相まっていい感じに恐ろしさを醸し出す。
蛍によって蜘蛛の子を散らすように人がいなくなりようやくホッと一息だ。
そしてお昼休みになり、私は今日はクラスの女子とお弁当を食べた。
すると話題は恋バナに。
やっぱり女の子はこういう時イキイキ、キラキラしてこうTHE☆女の子って感じになるよねー。
と他人事のように話を聞いていると話題は自然と私と蛍の関係に。
「で、ちゃんは月島君と付き合ってるの??」
「絶対そうでしょ!!だって名前呼びで仲良いし、なによりもあの〝キーホルダー”!!お揃いでしょ??」
その単語に私はビクッとした。
キーホルダー?なんでお揃って知ってるの!?
その驚愕の顔を読み取った彼女は教えてくれた。
私がカバンから外してあまり使わない定期入れに付け替えたのを見た彼女は、更に蛍の筆箱に同じキーホルダーが付いていた事を。
その言葉にゆっくり蛍の机の上の筆箱を見ると、そこにはあのキーホルダーが付いていた。
その視線に気付いてか、蛍はキーホルダーを持ち爽やかに笑ってきた。