第6章 壮行式とインターハイと期末テスト
「ほんとだ!スゲー!写真デケェーーー!!」
体育館に入った私の耳に届いたのはそんな夕ちゃんの声だった。
その手には私の杞憂の元である【月刊バリボー】がしっかりと開かれていた。
夕ちゃんの横には田中さんとスガさんが胡坐をかいて座っている。
田「だろ?」
なぜか得意そうな田中さんの明るい声につられて「なに、なに?」と旭さんも寄って行っていた。
旭「うわぁ!!!」
そんな大きな声にまた今度は日向と影山が集まっていく。
チラリとこちらを見た夕ちゃんはそのまま雑誌に目を落とし、目を輝かせていた。
その様子を見るとまだ私のページは見られてないのだろう…
そう安堵のため息を吐きながら素知らぬ顔でその輪に溶け込む。
日「何すか?どうしたんすか?」
田「ホレ。今年の高校生で特に注目ってなってる全国の3人の中に白鳥沢の牛若が入ってるんだよ!」
日「白鳥沢って…影山の落ちたトコ!?」
影「うるせぇ!!!」
蛍&山「クックック!」
嘲笑する蛍と山口君に対して影山君が食って掛かる。
そんないつも通りの様子を颯爽とスルーして日向は先輩方に質問を投げかけていた。
日「で、白鳥沢の牛若って??」
田「なんだ。知らねぇのかー。牛若って言うのは県内で今、ナンバーワンエースの牛島若利だ。」
そう言っている田中さんの説明を聞きながら日向の手元を見ると、そのデカデカと乗っている若の写真は見るからにあの時のもので。
次のページには間違いなく私がデビューしているに違いないと確信し、そっと日向から雑誌を受け取り興味有り気な振りをして開いたページを固定する。
大「うーん。これぞまさにエースって感じだよなぁ。」
いつの間にか背後に立っていた大地さんのそんな言葉を聞き、ついつい旭さんを見てしまった。
そしてそんな行動はメンタルがガラスの彼の心を大いに傷つけてしまったらしい。
すっかりしょぼんとしょげてしまい、夕ちゃんに肩を叩かれ励まされている姿に思わずホッコリした。
---なんか大きなゴールデンレトリバーみたいだよね。旭さんって。