第6章 壮行式とインターハイと期末テスト
幸か不幸か、音痴な私はチア部の振り付けを全く覚えられず前でピョンピョンするだけという出演となった。
お陰で放課後の練習にも出なくて済むこととなり心底安心したのだった。
ーーーつか、なら出なくていいんじゃないか?
と思うんだけども、チア部の部長さん曰く私があのユニフォームで出てくるだけで意味がある。…らしい
どちらにせよ、応援と資金獲得の為には仕方ない。
文字通り一肌脱いだ私はよく分からない混沌とした渦に巻き込まれて行くのだった。
壮行式から数日後の体育館。
そこには頭を突き合わせて『月刊バリボー』を眺める部員が居た。
月刊バリボー。
それはバレーに関わっている人間ならば1度は見た事がある、有名雑誌だ。
そして、私が今専属でレポーターとしてコーナーを持たせて貰っている雑誌でもある。
一応、高校名は伏せて東方地方の現役女子高生とだけ掲載される予定になっているけど…
こんなにネットが発達してたら速攻でバレそうだけどね。
しかも今月号はそのデビュー号であり、この間の牛島若利との攻防も載せられる予定であった。
今日もチア部の応援として、他の部活の応援に駆り出されていた。
腹見せのユニフォームに短いスコート、そんな格好で笑顔を振りまいて…女って大変だ。
…でもそんな姿に喜ぶ男が居て、需要と供給で成り立っているのだ。
そんな考えをしながらも、悟られないように笑顔で愛嬌を振りまく。
「可愛いーー!」
「おい、アレってじゃん!チア部なの!?」
「壮行式以来お手伝いしてくれてるらしいぜ」
「肌白!しかも細ッ!」
「なぁ、エロいよなー」
「ヤリたいよなー」
「だよなー」
ーーー最低。
でもそんな最低なヒソヒソ話にも慣れつつある。
みんな考える事は単純で一本道なのだ。
青春真っ只中の男子高校生なんてそんなもんなんだろう。
ーーー蛍なら違うのに。
蛍はいつも私の予想を上回る返答ばかりで、いつも私を惑わせる。
でも案外素直な所もあって…て!また蛍の事考えてる!
音痴な私に用意された全然踊らなくて良くて愛嬌振りまくというポジションで、また蛍に思いを馳せていた。
そしてチアのお手伝いが終わった私は一目散に体育館に向かうのだった。