第6章 壮行式とインターハイと期末テスト
そうこうしている内に【Tシャツゴッコ】というTシャツに文字を写し取れる機械での作業の説明が縁下先輩からあった。
どうやら筆で図案を書いて、光を当てるとその黒い所に反応して小さな穴が開く。
その上からインクを塗るとステンシルの様に文字が現れるらしい。
そんな説明の中、床に散らばった雑誌なんかを田中さんは片付ける。
そして書を書こうと構える田中さんに、蛍は慌てて声を掛ける。
蛍「ちょっと、田中さん。下書きは…?」
田「そんなのいるかよ!書ってのは気合とパッションだぜ。
……ソイヤーーーーッ!!!」
夕「その意気だぜ!」
その気合とパッションが詰め込まれた味のある書はドンドンと出来上がっていく。
女房役の夕ちゃんと息もピッタリに書いて、書いて、書いていった。
気付くと書はいつの間にか14枚になり、その枚数に蛍は眉を顰める。
蛍「田中さん、枚数おかしくないですか。」
田「あ?なんでだ?俺達2年が5人で表裏で10枚いるだろ?
そしてと月島の2人分で4枚、合ってるじゃねェか!びっくりさせんなよ。」
蛍「はァ!?はまだしも何で僕まで…」
田「何言ってんだ!ここまで一緒に残ってくれたお前を仲間外れになんてしねェって!
な、嬉しいだろ?先輩ってこういうことだろ?ハッハッハー!」
墨の付いた手で触って鼻の下に一直線に真っ黒な痕が付いた田中さんはさも満足そうに笑った。
何を言っても無駄だと悟った蛍が“スン”とした顔をする。
その肩に手を置かれ、振り返った先には同じ顔をした縁下先輩が居た。
その先に見える夕の背中に書かれた【一蓮托生】がやけに眩しく感じられたのだった。