第6章 壮行式とインターハイと期末テスト
そんなこんなでギャアギャア騒いでいると、開け放たれた体育館の入り口に大地さんの姿が見えた。
---お疲れ様です、と声を掛けようとするとそれを遮るように「澤村!」と女子の声がした。
この声は道宮先輩だ。
この鈍いと定評のある私でも気付いている。
彼女は大地さんに惚れている、と。
中途半端にしか練習せず、中途半端な団結力しかないチーム。
そして中途半端な統率力のない主将の彼女を私は毛嫌いしている。
というかなんだろう…生理的に無理的な。
言葉で説明し難い“あ、コイツとは仲良くなれねぇな”という本能。
そんな最低な事が瞬時に頭を駆け巡り、どす黒い感情に意識を取られていた私は田中さんの言葉で意識を取り戻した。
田「……壮行式の話だろうな。」
夕「ああ。」
タンクトップで腕組みをしたまま感慨深そうに話す田中さんを見ながら、私の頭の上にはクエスチョンマークが浮かぶ。
田「あの、全校生徒に期待されている感じがたまんないよな!」
夕「ああ、あれは燃えるぜ。」
何か分からないレベルで2人は話し、そしてテンションが上がっていく。
ブワッとした2人の熱気に気後れしていると2人は更に語り合う。
田「しかも、女子の応援もある!女子の声援なくしてなにが壮行式だ!
もっともっとキャーキャー熱く応援されてェよな!
そうしたら……絶対負けられねェし!」
夕「その通りだぜ!龍!」
田「ノヤッさん!」
そしてガッシリと熱い握手を交わす2人を靴紐を結ぶ縁下さんがチラリと見上げて呟く。
縁「しょーもない……」
あきれ顔の縁下先輩に“壮行式”について説明してもらう。
要するに【頑張ってきます宣言会&声援会】らしい←雑
毎年いくつかの部活はパフォーマンス合戦のように派手さを競い合っているらしい。
そこまで聞いて背筋が凍るように寒くなって来た。
私の本能が告げている。
---ここを離れなければとんでもないものに巻き込まれる、と。
ふと気付くとそこには大地さんが居た。
大「おい、俺が見てないからってサボるなよ。」
田「そ、そんなんじゃないッスよ!壮行式に向かって意気を上げてたんですってば!」
そんなやり取りの後、ある一言で私はこれから起こる珍事に巻き込まれていくのだった。