第2章 新学期と新生活と入部
『キス、一回で許してくれる?彼女がいなければだけど。』
「は?えッ!?……彼女はいないけど………ってキス魔になったの??」
『…キス魔!?ちがーーーう!!蛍の好きなものなんてキスしかわかんないもん。それに蛍としかしたことないし…。』
「(とのキスという点では好きなもの、間違ってないけど)…僕としかしてないの?あの小学生以来?」
『う、うん。』
「そう。じゃあいいよ。キスで。その代わりからしてね。」
『え…!!』
精一杯勇気を出して言ったのに自分からしてって!
無理すぎる心臓が持たない!
そして顔が真っ赤だ!←
〝早くしてよね”って言っている蛍も耳が赤い。
そこまで考えてふと物理的な問題に気付いた。
だいたいこの身長差…蛍が屈んでくれない限り無理…。
そしてこの場所の事を思い出す。
…階段!そっか!
思い付いた私は階段を何段か上がる。すると怪訝そうな蛍より少し高い高さまで上がれた。
そこから手でこまねいて蛍に近くに来てもらう。
何をしたいのか分かった様子の蛍は大人しく近くに寄ってきた。
ドキドキする私の様子に気付いて蛍はフッと笑って目を閉じてくれた。
その端正な顔立ちにゆっくり近づく。
前も言われたから唇の重なる瞬間は目を閉じた。
途端に感じる自分以外の体温。
あの時感じた体温よりは少し低くて、大人の男の人なんだなぁと私に思わせた。
そんな風に一瞬考えてすぐ離れる。
また私は茹蛸みたいに真っ赤になっているだろう。
離れて目を開けるともう目を開けていた蛍の口角が上がった。
不覚にもその顔にときめいてしまう。
「高校生なのにそんな小学生みたいなキスじゃあお礼にならないよ?」
その言葉にまんまと私は動揺する。そして階段を踏み外して前に落ちそうになる。
『わわっ!』
「危ない!」
その蛍の声と共に蛍に抱き留められる。
そして抱きしめられたまま地上に足が着いたと思ったら壁際に追いつめられる。
「危なっかしいなー。は。しかも天使みたいにフワッて降って来て。軽いし、天使なんじゃないの?」
壁に追いつめられて更に腕の中っていうのもあるけど、蛍にしては珍しく〝天使”なんて言葉の比喩にくすぐったくなる。