第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
「俺の負けだ。」
『いいえ。勝ったのはあなたよ。セッターに返せなかったもの。
あのボールは最後まであなたのものだった。』
淡々と答えるといきなり牛島若利が近寄って来た。
「。お前のことが気に入った。俺のモノになれ。」
『…は??何言ってんの?』
「だから俺のモノになれと言った。」
『いや。聞こえているし意味も分かっているけど。さっきの今でどういう心境だっていう意味。』
「俺のボールを2本目で取れるような女を手放したくないから俺の女にしたくなった。駄目なのか。」
『どう考えても駄目でしょ!』
私の言葉に未だ牛島若利はクエスチョンマークを浮かべている。
何が駄目なのかさっぱり分かってないらしい。
助けを求めて師匠を見ると簡単に説明してくれた。
彼は“超”がつくほどのバレー馬鹿だと。
言われてみれば嫌味というか、思ったことをそのまま伝えてくるだけで意地悪ではなさそうだ。
私は生物学上“女”だからそう呼んだだけ。的な?
『牛島若利さん。そういう“俺のモノになれ”っていう言葉は愛する人に使う言葉なんで私は該当しないと思うんですが。』
「愛?それは俺が知らない感情だ。」
『そうでしょうね。愛する人っていうのはいつどんな時でも頭の隅に居て会いたいような人の事を指すんです。』
「確かにそれはお前ではないな。」
『でしょ?だからそれは愛する人に言ってあげて下さい。』
そう伝えると牛島若利は考え込んでいた。
(俺の頭の隅にいつも居て、時々会いたくなる奴と言えば…)
(---若利クーン!今、何してるんですかーー?)
(・・・天童??)
見事な誤解が生じた瞬間だった。