第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
怒涛の伊達工業の取材を終え、一息つく間もなく私達は今度は白鳥沢へと向かった。
しかし、白鳥沢の体育館は予想に反して静かで師匠と私は顔を見合わせる。
音からしても1人がアタックを打っている音しかしないのだ。
師匠の「失礼しまーす」という声と共にドアを開けると、中には異様な雰囲気を漂わせる長身の男の人が居た。
さっきの移動時間に師匠から聞いた白鳥沢のエース、そう身体で感じる。
長いことバレーをやっている私じゃなくても気付くレベルで彼は相当強いと気迫が物語っていた。
そして私達を一瞥した彼はその動きを止めてこちらへ問い掛ける。
若「…誰だ。」
竹「予めアポイントを取らせて貰っている〝月刊バリボー〟の者です。竹本と申します。前回もお会いした筈なのにもう忘れてしまったのですか?」
若「いや、貴方は知っている。その後ろの挑戦的な目をしたお前に聞いているんだ。」
『…!!』
いきなり話題を振られ、そこでようやく自分が獲物を見る様な目で目の前の〝牛島若利〟を見ていた事に気付いた。
若「まぁいい。別に名前を聞いた所で興味の無い奴のことは覚えていない主義でな。
それよりもどうしてお前はそんな扇情的なんだ。俺のボールを取れると思ってるのか?」
『私の名前はです。……逆に他人に取られないとでも思ってるんですか。おこがましいですね。』
若「…女。いい気になるなよ。」
『女っていう言い方やめてくれます?たかが男の分際で。』
なんだか人の神経を逆撫でする牛島若利の言葉に私のイライラは頂点に達しようとしていた。
昔からバレーの事になると〝女〟というだけで馬鹿にしてくる奴が許せなかった。
お前らなんて偶然男に生まれただけで力を持っていて、それで勝てると思ってるなんて馬鹿馬鹿しい。と。
そんな奴らに負けない様にバレーも頑張って来たのだ。
若「女。俺のボール取れるのか。」
『1本様子見したら、2本目で取れますよ。やってみます?』
若「ほぅ。いい度胸だ。」
『手、抜かないで下さいね。』
こうして負けず嫌いな私のよく分からない…いや、強いて言うならは女のプライドを掛けた戦いが始まるのだった。