第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
強烈な印象を残した伊達工の練習を見終わって師匠が監督たちに挨拶に行っている間、一人で待っていると遠くに青根さんが見えた。
さっきはびっくりして簡単なお礼しか言えてなかったので、改めて挨拶しようと思い青根さんへ近付いて声を掛ける。
『あの、青根さん?』
「・・・!!!!」
何故か青根さんは私の問い掛けに肩を揺らして驚き、強面な顔を更に強張らせた。
『さっきは庇ってもらってありがとうございました。それなのにちゃんとお礼言えていなくてスミマセン。』
「いや…別に俺が勝手にやったことだから…。アンタに怪我が無くて良かった…」
『!!…青根さんってズルいですね…今のキュンとしました…』
「…そういうこと言われると男は誤解するぞ…」
『???』
“誤解”の意味が分からず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべているとふいに背後から人の気配がした。
振り返るとそこには二口さんが立っている。
その顔は眩しい位の笑顔で。
二「そうそう。罪作りな子だね。ほんとに俺、ちゃんのこと狙っていい??」
『いや、それは…困ります。一応禁止になってますし。』
二「でも人の気持ちって止められないよね?俺、諦めないから。今度試合見に来てよ。惚れさせちゃうから。」
そこまで言うとゆっくりとした動きで二口さんの手がこちらに伸びて来て、その綺麗な指が私の唇をゆっくり撫でた。
二「…そしてその時にはこの美味しそうな唇をいただきます♡」
あまりにも妖艶に笑う彼に心臓がキュッとした。
今までに会った事の無いタイプの彼にボーっとしているとクスクスと笑われる。
二「そんなに無防備に空いてたら奪いたくなっちゃうな。」
そう言ってズイっと近寄って来た二口さんに危機感を感じると、今度は青根さんの手が私達の間に割って入りそのまま二口さんを連れて行ってくれた。
二「(ちょっと青根!良い所だったのに!)」
青「・・・。」
二「(何?まさかお前も本気??)」
青「・・・。」
二「(マジかよー!お前とライバルになる日がくるとはな!)」
青「…望むところだ。」
二「!!!」
---人知れず、ここでも戦いの火蓋が切って落とされたのだった。