第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
そんな白熱した闘いの中、クロのサーブとなった。
フワッと上がったボールは一直線に蛍を狙う。
蛍「くっ!」
蛍はレシーブしきれず球はあらぬ方向に飛んでいく。
黒「あれー?メガネ君もしかしてレシーブ苦手なの?レギュラーに入れたのはその身長のお陰だけかな??」
蛍「…くそっ!」
珍しく悔しそうな蛍に烏野チームは目が点になる。
(((((あの月島が悔しがっている!?)))))
その後も蛍は狙われ続け、4点連取された頃に烏野は堪らずタイムアウトを取った。
蛍「スミマセン」
(((((月島が謝った!?)))))
その一言を残して蛍はボトルの籠の所に行き、タオルを頭から被りしゃがみ込んだ。
たまらず私は蛍のもとに向かう。
蛍「…何。ボロボロな僕を笑いに来たの?」
『こんな時にまでそんなこと言ってるの?もう…蛍、よく聞いて。
アンダーの角度をあと5度鋭角にして。そして足の幅は肩幅よりもう15㎝広げる。膝ももっと曲げて衝撃を吸収して。
そしたら取れる。蛍なら取れるよ。』
蛍「5度とか15㎝とかそんな正確に出来ると思ってるの?」
『普通ならね。日向なら無理だと思う。でも蛍なら、蛍になら出来ると思う。』
ムム。という顔をした蛍はそれ以上喋らなくなったが、私には分かる。蛍はやってくれると信じている。
タイムアウト明け、引き続きクロの狙いは蛍で。
そして蛍が落下点に入ると私の言った通り5度だけ鋭角にし、足の幅は15㎝開かれ、膝で勢いを殺した。
その返球はばっちりと言うにはまだ足りないがなんとかセッターに返る。
そのボールを影山君が捌き、旭さんに繋いで烏野の得点となった。
思わずガッツポーズをした私に向かって振り返った蛍はとても優しい顔をしていた。
愛おしいものを見るようなその視線に一瞬怯むと隣でシャッター音がした。
竹「頂きましたーーーー!その愛情の籠った眼差し!いいねー!青春だねーー!」
『あ、愛情って…』
その日の練習試合は、結局音駒に一回も勝てなかった。