第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
『…蛍!蛍ってば!もう離してよ!』
そう言うとパッと手を離される。
いきなり身体を引っ張ていた力がなくなり重心の変化に少しフラついた。
「公に皆に伝えられなくても僕と付き合ってるんだから。他の男の前で気を抜かないでよね。」
---んん?これは嫉妬というやつか?あの、蛍が、私に、嫉妬!?なんだ、可愛い所もあるじゃん。
「それ以上バカにしたら今度はベッドの上で泣かせるからね。」
『ひっ!え、遠慮します!』
心底怯えた様に私が答えると、気分が良かったのかようやく蛍に笑顔が戻った。
ほんわかした空気が2人を包んでいると、体育館のボールの音に意識を戻される。
『やば!練習始まったみたい!蛍、早く!』
「ん。行ってくる。」
『え…!?……!!!』
唇に柔らかい感触がしてキスされたと気付いた頃に見えたのは、蛍は後ろ手にヒラヒラと手を振って去って行く後ろ姿だった。
相変わらず彼にドキドキされっぱなしな私の胸の鼓動はまだ止まず。
煩い早鐘に困り胸を押さえた。
「いやー。ラブラブだねー。」
『ギャーーーーー!!!』
その声の主は竹本さんだった。
「まぁ昨日付き合ったばかりの高校生カップルならしょうがないか。とりあえず皆にはバレないようにね。さぁここからはお仕事だよ!行くよ!」
そう言って体育館に向けてグイグイと背中を押される。
キスを“しょうがない”の一言で済ませられるなんて大人だ。
私なんてキスの1つでこんなに大騒ぎなのに…。
女としての経験値が違う…師匠だ…。
竹本さんは私の女っぷりの師匠だ…。
『あ、あの!竹本さん!師匠って呼んでいいですか!?』
「は?なんで私が師匠???」
『なんか竹本さんは大人の女というか、女っぷりが凄くて…。
私まだまだお子ちゃまなのでそういう所を学びたいな。って思って!』
「ふふ。何それ。ホントちゃんは面白いね。いいわ。師匠でも何とでもお呼びなさい。
私がちゃんを立派なレディにしてあげるわ。」
『あ、ありがとうございます!師匠!!!』
---こうして私は師匠の弟子となった。
あれ?これって何の話だっけ?ま、いっか。
【※これはバレーのお話しです】