第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
『蛍の事が好きなの。』
クドクドと続く見当はずれな勘違い言葉の中、消え入りそうな声で精一杯伝える。
「は?そう言えば僕が離れていかないとでも?友達として好きとかそういうのは要らないの。他に好きな人がいる癖にそういう思わせぶりな態度とか本当にタチ悪いから。」
ーーーこれでも伝わらないってどういうこと?
もはや、何を言っても無駄じゃないのかと思うほどアマノジャク蛍がアマノジャクキングタム(?)の王様になっている←
こうなりゃヤケだ!
全部伝えてやる!
『もうっ!!だから!私の好きな人は蛍で!男の人として好きってこと!触ったり、触られたいのも蛍だけだし、キスしたいのも蛍だけなの!分かった!?』
「え?」
一息に全て伝えると、一言だけ発した蛍は所謂“鳩が豆鉄砲を喰らった顔”で止まった。
そして ボッと音がする程真っ赤に顔が染まっていく。
そうだろう、そうだろう。恥ずかしいだろう。
あんなにも一生懸命伝えようとしたのにアマノジャク全開で激ネガティブを貫いたんだもの。
そりゃあ、恥ずかしいだろう。
そして言わずもがな、私もクソほど恥ずかしい。
そしてさっきとはうって変わって静寂が辺りを包む。
ーーー何か話した方が良いのか、と声を出そうとしたタイミングで蛍が話し出した。
「で、なんだか告白しただけで満足してそうだから一応有耶無耶(うやむや)にならないようにしとこうね。」
『え?』
「僕と付き合って下さい。」
仰々しく片膝を着き、スッと手を差し伸べる蛍はおとぎ話の中の王子様の様だった。
『はい。』
そう答えて手を重ねる。
すると蛍は立ち上がって手を離した。
折角繋いだ手を離すなんて…と心の中で呟くと蛍の大きな両手が私の顔を包み込む。
そして上を向かされた。
「一生、大切にする。」
蛍らしくない優しい声色と初めて見る優しい笑顔に心底驚いた。
そしてゆっくり近付いてくる蛍の顔に気付き、私も瞳を閉じる。
唇が合わさるまであと2秒。
幸せの音がした。