第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
驚いた。
スガさんにあんなに真っすぐ告白されるとは思わなかった。
そして自分が…蛍をこんなにも好きだなんて…
でも、今更だよなぁ。
なんであの時に蛍からのキスを拒絶してしまったんだろう…
…なんて、自分が一番分かっている。
クロとのあの行為にやっぱり背徳感を感じていたからだ。
あんな性欲に塗れた行為をした自分が許せなかったのだ。
出来ることなら綺麗なまま蛍に愛されたかった。
もう蛍からも拒絶されてしまって…遅すぎるけど…
この恋心は嘘ではない。
洗ったドリンクホルダーの泡が排水溝にグルグルと吸い込まれていく光景を見ながら、私の頭の中も考えがグルグルと回っていた。
「さん。」
突然声を掛けられ、驚いて弾かれた様に振り返るとそこには山口君が立っていた。
私は悲しい気持ちが表れないように精一杯明るい声で話す。
『ど、どうしたの?ビックリしたー。』
「ツッキー昨日から元気ないんだ。」
彼の口から出た“蛍”の言葉に身体が無意識に緊張した。
「僕が知っているツッキーは昔からあんまり気持ちを表に出さないタイプだったんだ。
……でもさんが来てからはツッキーには色んな感情が表れるようになったと思う。」
山口君の言いたいことが分からずに、困惑しながら成り行きを見守る。
「昨日何かあったのはツッキーの反応から分かった。そしてツッキーはまた昔の状態に戻った。」
---戻せるのはさんだけだ。行ってあげて。
山口君のその言葉は魔法の様に私の中に染み入って私は何故かすんなりと受け入れられた。
「体育館の裏戸からさっき合宿所に向かっていったよ。」
その山口君の言葉を背中に受けながら私はもう走り出していた。
今更遅いとかそんなのどうだっていい。
この気持ちを伝えるんだ。
ありったけの想いを伝えるんだ。
あのアマノジャクに。
いつだって隣に居てくれた。
離れてから初めて気付いた。
蛍の不器用で分かりにくい優しさに。
早く、早く伝えたい。
---あなたの事が大好きだと。