第5章 青の対戦と赤の対戦と強豪校
『付き合うのってやっぱり好きな相手との仲で出来るものですし…』
菅「でもちゃんとこのままだったら俺は特別になれないし、チャンスもない。そして、君が色んな男から口説かれるのをいつまでも指を咥えて見てられない!
俺を…選んで。」
そう言ってスガさんから手が差し伸べされた。
いつも爽やかなスガさんの苦しそうに歪められた表情に胸が苦しくなる。
ーーーどこかでこのセリフ言われた事ある…。
蛍だ。
旭さんと会ったあの土手で蛍が言った言葉ソックリだ。
でも蛍の顔を思い出すと、拒絶されたあの記憶が呼び出されてまた苦しくなる。
スガさんは優しくて、この人と付き合ったら絶対幸せになれる。
大切にしてくれてお姫様のように扱ってくれるだろう。
この苦しい現実に目を背けて、彼の手をとって苦しみから解放されたい。
フラフラと私はスガさんの手を取りそうになる。
するとまた、蛍に言われた言葉が蘇る。
ーーー“この空気に流されて、なんてやめてね。本当に僕の事が好きって気付いたらその時に返事を頂戴。”
…私ったらまた空気に流されていた。
この手をとって楽になりたいって…
それはスガさんにも勿論だが自分にも嘘をついていることになる。
そこまで考えた頃にはもう私の胸には1つの答えが出ていた。
菅「ちゃん?」
『スガさん、ごめんなさい。私…好きな人がいます。自分でもようやく今、答えが出せました。だからその気持ちには応えられません。』
菅「そっかぁー。残念。じゃあ今の忘れて。疲れてる時にごめんな。」
ーーー皆も変な空気にしてゴメン!
そうスガさんが言った事によって、私はようやく周りの全員が自分達の事を固唾を飲んで見守っていた事に気付いた。
そしていたたまれなくなり、空のドリンクホルダーを持って足早に体育館を後にする。
今1番顔を合わせたくない、蛍の視線を突き刺さる様に背中に感じながら…。