第4章 復帰と合宿とお猫様
「研磨が迷子になった。“誰かさん”と一緒でな。」
そのクロの一言で色々察する。
1つは勿論研磨の迷子。今子供たちが言っていた金髪赤ジャージは研磨の事だろう。音駒の友達が“弧爪先輩が金髪になってた”って一大事をLINEしてきてたし。
そしてもう1つは私の迷子がばれていること。
でもでも、この迷子には深い意味があって、ニヤニヤ顔のクロに一生懸命説明する。
『ち、違うの!元々は他の1年生が迷子になって、それを助けに来ただけなの!』
「で、ミイラ取りがミイラになった訳ね。」
『ぐっ。』
全く以てその通りの例えに私はぐうの音も出ない。
とりあえずクロのさがしものは見つかった訳で、私は私のさがしものをすべくクロへ別れを告げる。
『研磨見つかって良かったね!私の方はまだ見つからないからもうちょっと頑張ってみる!』
そう言って手を振って別れを告げるときょとんとした顔をされた後、またあの意地悪い顔をされる。
「お前がそんなタラタラ探して更に迷子になっている間に多分もう他の奴が見つけてんじゃねーか?見つかってなかったとしても、地元で迷った迷子と都民のお前で目的地まで帰れる可能性はゼロだな。」
『ぐぐ。』
まさに正論。
あぁ正論。
蛍がこの場にいたならば同じことを言われたであろう。
「俺達は烏野総合運動公園の合宿所にいるんだ。ここから近いからそこまで一緒に行くぞ。そこまで行ったら帰り道が分かるだろう?」
『そこからなら多分帰れると思う!一回行ったことあるし!』
多分という言葉にクロが眉をひそめる。でも多分大丈夫だと思う!
とりあえずこの商店街から抜け出せなければ困るのでその助け舟に乗っかることにした。
久しぶりにクロの横に並んで歩く。
クロから香るなんだかいい香りに心が落ち着かなくて首を振る。
高校3年生になるとこんなにも男の人って変わるものか、とこっそりと隣のクロを盗み見る。