第4章 復帰と合宿とお猫様
「宮城に行ったとは風の噂で聞いたけど、まさか烏野とはね。」
そう言って私のジャージをクロは指し示す。
「なんで何も言わずに居なくなったんだ。」
何も言わない私にクロは確信を突いてきた。
『だ、だって。転校なんて言ったらクロ絶対反対するし。』
「だからって何も言わずに居なくなったら心配するだろ。せめて決まった後でもいいから教えてくれれば良かっただろ?」
『だって…クロに反対されたら…行けなくなっちゃいそうだったから…』
そんないじらしい言葉にクロは喜びを噛み締めながらを抱きしめようとした。
が、そんな彼の思いはの言葉で踏みにじられる。
『あと研磨にも言われたら行けなくなる。』
クロside
---可愛くてずっと大切にしていた俺たちの姫がいなくなったのに気付いたのは4月の入学式だった。
俺達を探してくれるであろうその姿が見えなくて、入学式でその名前がないことに気付いた俺に残されたのは絶望感だった。
油断していた。
部活も上級生が居なくなり、ようやく研磨を使えるようになって力が付いて行くのが分かった。
主将になり、順風満帆で。来年からは可愛い可愛い俺たちの姫が部活のマネージャーとなりずっと一緒にやっていけると思った矢先の出来事だった。
の友達から聞いても宮城に行ったことしか分からなかったし、口止めされていてのLINEも教えてもらえなかった。
近所で、近くにいたから連絡先も知らない自分には何も出来なくて。
その日の帰り道に、少し遠回りをしての家の前を通ったら家には明かりが点いておらず。住人の不在を物語っていた。
その姿に空虚感をまざまざと見せつけられた俺は失意のまま日々を過ごした。
研磨は気付いていただろうが何も言わなかった。
今年もマネージャー希望者のいないことを嘆いている猛虎に対しても、研磨は静かに制しただけで何も言わなかった。
可愛くて大切で文字通り“手が出せない”状態で。
健気でひたむきで愛らしくてを形容する言葉なんて言い表せないくらいだ。
宮城の練習試合ならどこかで会えると思っていたら初っ端で会えて俺は驚きと喜びを感じた。
と同時に女としての魅力が確実に上がっているに焦りを感じた。