第4章 復帰と合宿とお猫様
ブーブー言う皆をよそに、もうウトウトして目を擦っているホカホカの日向を小脇に抱えてコーチ達の部屋に行く。
案の定、夜は何ともなく過ごせてきちんと睡眠は取れた。
寝ている途中飛んでくる日向の蹴りに、ゆうちゃんの昔の寝相の悪さを思い出して少し笑えたのはまぁ日向には内緒にしておこう。
朝は武田先生の気配に釣られて起きて、時計を確認するとまだ針は5時を過ぎた所で。
“あれ?起こしちゃった?”という声に軽く首を振り、朝食作りに向かう彼のお手伝いを申し出る。
“悪いから”と断る彼をまぁまぁと丸め込んで一緒に調理場へ移動する。
すると外にはランニングをする気配があり、少し窓を開けると外を走っている人影と目が合う。それは影山君だった。
『おはよう…早いねー!』
「……お、おう。お前もな。」
その反応に久しぶりに女の勘が働く。
何かおかしい。挨拶しただけなのにあの反応。
…まさか!!!!
『ABCDEFG~???』
「ば!俺は別にFなんて気にしていないからなッ!!!!」
だ・い・ち・さ・ん・め!!!!!!!!
この様子だと絶望的だ…。
多分全滅だ…日向以外は……。
大地さんの事だからブツブツ独り言を言って拾われて大騒ぎになったに違いない…。
どうしてやろうか…と一瞬思ったが、別に胸を見られた訳でもないし大人になろう。そうしよう。うん。
いや。
見られたわ。ブラ。
そうやって落ち込みと立ち直りを繰り返している私を見て影山君は不思議そうに首をかしげている。
「お前はこんな時間から何してんだ?」
『へ…?あ、あぁ。朝ごはんのお手伝いに来たの。』
「またゆで卵か?」
『い、いや。お味噌汁くらいは作ろうかと思っているけど。』
「そっか。じゃあお前の味噌汁を食べられるのを楽しみにしとく。」
『なんだか…新婚さんみたいだね?』
「バッ!バカヤロー!何言ってんだァ!???」
そんな真っ赤な影山君にこっちも釣られて赤くなる。
新婚って!恥ずかしいことを!
そこに武田先生の小気味良い包丁の音が聞こえてくる。
出遅れた私は急いで調理場へ戻ることにした。
『邪魔してごめん!頑張ってね!』
「おう。お前の味噌汁、新婚気分で飲んでやる。」
彼の珍しい冗談に2人で笑い合ってその場で別れた。