第1章 プロローグ
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それから3日後。
元カレのことをすっかり忘れていた私は、あのおでんだけがまた食べたくて仕方なかった。
そうして、また「ハイブリットおでん」を訪れることにしたのだ。
「おう!すみれじゃねーか!座んな座んな!ちょうど卵がよく煮えてるぜ!」
のれんをくぐると、すぐにチビ太さんのべらんめぇ口調な声がかかった。
「あの、この前はありがとうございました。もう、すっかり立ち直れて。
チビ太さんのおかげです。ありがとうございました。」
「へへっ、そりゃあよかった!なんでぇ、笑った顔すげぇいいじゃねぇか!」
「ふふっ、ありがとうございます」
「最近はどうなんでぇ?」
「ずっと奴に貢いでたせいで、当時はギリギリの生活で。
今は貢いでこそいませんが、別れ際貯金を持ってかれちゃって。
仕事もクビになっちゃって大変ですよ……。」
正直、この3日間は食べるものの確保にすら苦労した。
今すぐにでも働かなくては実家に帰るよりない。
辛うじて残っていた小銭を握り締めつつ、このおでん屋に向かったわけであるが。
「そりゃあ大変だなぁ……。」
そうして、それっきり、チビ太さんはなにか考え込んでしまった。
時折、「ん~」とか「いやぁ……。」など首をかしげながら。
「あの~……チビ太さん?」
「はっ!すまねぇな、考え事しててな……決めたぞ!すみれ、この店で働く気はないか?!」