第3章 六つ子との遭遇
私は、不思議の国にでも迷い込んでしまったのだろうか。
見渡す限り、同じ顔が6つ、色違いで並んでいる。
赤いパーカーから、声を発した彼がおそ松さんだとわかった。
「も~おそ松兄さんってば、おでん食べに行くだけでなんでそんなに張り切って……ってえええ?!じょ、女子!! 」
スマホをいじる手を止め、私を見て驚いたのは、ニット帽にピンクのパーカーが特徴の男性だ。
『えええええ?!』続いて、残りの4人が驚きの声をあげた。
「へっへ~ん。紹介しよう!彼女こそが、このハイブリットおでんで昨日から働き始めたすみれちゃんでーす!みんな、失礼の無いようにな!」
「何勝手にドヤ顔で紹介してんの?!あっ、三男のチョロ松です!」
おそ松さんの紹介に緑色のパーカーを着た男性がノリツッコミを入れる。
「えっと、ご紹介に預かりましたすみれです!よろしくお願いします!」
「うわぁ、超イイコだね♪僕、末弟トド松!気軽にトッティーって呼んでいいよ♪ねぇねぇ彼氏いるー?」
横からヒョイっと身を乗り出して来たのは、ピンクが特徴のトド松さん。
「い、居ません!」
『まじ?!』
「おい、お前ら!すみれに手を出したらタダじゃおかねーからな!」すかさずチビ太さんの睨みが入った。
「何アイツ。あ、僕、四男、一松。よろしく。」
そう言った一松さんは、紫のパーカーにジャージを合わせていた。
「な?チビ太のガードが固くてさ~」
「僕、松野家のーえっとー、五男!十四松!やきうする~??」
おそ松さんの話に割り込む形で十四松さんが飛び出す。
伸びきった黄色いパーカーと半ズボンからは、溢れ出る無邪気さを感じる。
「十四松、話違う。」
「そっすか?」
キリッと半目になる十四松さん。
「フッ……やっと会えたな……カラ松GIrl……」
そう言い、身につけたサングラスから人工物の瞳をのぞかせたのは青いパーカーの・・・
「次男のカラ松さ。君との出会いに……カンパイ……」
『うーわぁ……』
気のせいだろうか?一気に体感温度が下がったような気がする。
「こいつ痛いでしょー?カラコンなんてつけてるし。ごめんねー?スルーしちゃって!」
「また人を痛がらせてしまった……フッ……俺も大概、罪な男だな……。」
「あ、よ、よろしくお願いしまーす……。」