第1章 プロローグ
「っ!」
ぼんやりと並ばれた文字を眺めていると、ふと背後に人の気配を感じた。
気付いたと同時に振り返るが既に遅く、その人物の腕の中に押さえ込まれた。
「相変わらず無防備だな、ヒロ」
「っ・・・クロロ!」
耳元で囁くように話す相手の名を呼ぶと、額に軽く口付けてくる。
外では雨が降っているからか、触れた唇は少し冷たかった。
「シャルに頼んで探させたら、ホテルを転々としてるとはな。見つからない訳だ」
当然のようにソファーでくつろぎ始めるクロロに小さく息を吐くが、それもいつものことなので、ヒロもまたパソコンへと向き直った。
「で、何の用だ」
「そう邪見にするな。仕事の依頼だ」
「・・・お前といい、イルミといい、俺に頼まなくても自分たちで調べられるだろ」
「イルミが?」
「メール、ちょうど今日来てる」
パソコン画面を見るように視線で促すと、クロロも腰を上げて再びヒロの横に並んだ。
「ふーん・・・」
メールを見るなりクロロは興味無さそうに、だがどこか不満そうに呟く。