第263章 ---.首から落ちた花
殺気石が きりきりと音を立てる。
臨は虚ろな目で、ただ闇を見つめている。
黒い霊圧は ただただその場を侵食し 殺気石さえも黒く染めていく。
濁ったその瞳には
「芭蕉臨!!!」
名を呼ばれ、意識を浮上させると 臨は虚ろな目で少女を見つめた。
無理矢理立ち上がらされ、その首元に小刀が押し当てられる。
(私はーーー何をしていたんだっけ)
耳元で騒ぐその小娘が五月蝿いと感じる。
(私はーーー何でここにいるんだっけ)
当てられた小刀が痛い。
目の前にいる男に見覚えがあるけれど わからない。
(私はーーーーーーーー)
(私)
(私は)
(ワタシハ)
"ワタシハ ナンダッタッケ?"
「姉さん!!!!」
少女の声が響く。
それに臨はゆっくりと視線を向けると 緩やかに瞳の澱みが取れていった。
「る…………きあ…………」
「次の舞 白漣!!!」
圧倒的な冷気が 迫ってくるその瞬間 羽澄は臨を突き飛ばし自身も氷から逃れる。
倒れそうになる臨を 白哉は受け止めると、ルキアは次の手とばかりに斬魄刀を振った。
「初の舞 月白!!!」
羽澄の体が 凍りついていく。
「っこれでおわってたまるかあ!!!」
しかし、即座に鬼道でそれを破壊すると 再び臨へ向かって踏み込んだ。
「芭蕉臨!!アンタだけは道連れにしてでもーーーー!」
次の瞬間 羽澄の腹に斬魄刀が突き刺さった。
「ーーーーーー」
「羽虫程度が」
斬魄刀が抜かれ 羽澄が膝をつく。
白哉はそれを見下ろすと、羽澄は小さく呟いた。
「終われない………まだ、終われないの」
「貴様の負けだ。芭蕉臨は奪還され 貴様は四十六室にて裁かれる」
「……………なあにいってんのかしらあ!?」
羽澄の顔が 狂気に満ちる。
「私が負け!?どこをどう見てそう思ったの!?あはははは!!」