第263章 ---.首から落ちた花
「南の心臓 北の瞳 西の指先 東の踵 風持ちて集い 雨払いて散れ
縛道の五十八 掴趾追雀!!」
黒い紙が 辺りに散乱する。
形振りなど 構っていられないとばかりに、紙に手を掲げるも 反応のないそれに拳を打ち付けた。
「何故だ!!何故反応しない!!!」
行き場のない怒りを 撒き散らす。
それに 侍女である千代はなんて声をかけていいのかわからずその名を小さく呼んだ。
「姉さんっ……姉さん、姉さん!!!」
途端に ルキアが蹲り泣き喚く。
情緒不安定なその様子に 千代は駆け寄りその肩を抱くと、今度は細身の彼女を突き飛ばしありえないと叫んだ。
「姉さんがいなくなる訳がない。姉さんが死ぬ訳ない。だって姉さんは昨日、私を家まで送って "また明日"と言ったんだ。手を振って ルキアと 名を呼んで……」
「ルキア様」
その声に ルキアが反応する。
「清家……殿」
「お忙しいところ申し訳ございません。ルキア様にお客様がお見えになっております」
すると その後ろから 見覚えのあるその人物が顔を出し 酷く申し訳なさそうに顔を歪めた。
「雷門……………いすゞ…」