第262章 ---.届かぬ月よ
その言葉に、臨がキョトンと目を丸くする。
それに白哉は顔を真っ赤にさせると、銀嶺は突然大きな声を上げ、柄にもなく腹を抱えて笑った。
「それはいい!臨、うちに入らぬか?お主 一応は貴族の称号を持っておるのだろう?」
「な、何言っているんですか朽木隊長!?子供の言う事を間に受けないでください!!」
臨のその 慌てた様子に銀嶺がさらに笑う。
それに臨は笑うなと怒り、思い切り頬を膨らました。
少年にとって それは一目惚れだった。
少年にとって それは初恋だった。
彼女との時間は非常に濃密で 自身の家にある文献を全て読んでしまった彼に、新しい情報と知識を付与した。
同年代には負け無しで 親戚達も手加減していたせいか 自身よりも強いものなどいないという錯覚を 真っ向から 叩っ斬った。
自分より優れたものなどいないと傲慢だった彼を 圧倒的な知識とその実力で導いた彼女に 心から惹かれたのはきっと必然だったのだろう。
朽木白哉にとって 芭蕉臨と言う人物は憧れであり、目標であり、それでいて最も身近な 愛しき存在だった。