第260章 ---.赤
臨が六番隊舎の門から ゆっくりと顔を覗かせると、若いのと老齢の 二人の門番がお疲れ様ですと声をかけ、臨はお疲れ様と笑みを見せた。
その様子に 若い門番の頬にぽっと朱がさす。
「臨」
そして男性のその声が聞こえると 門番達は顔を引き締め その人物に敬礼した。
「お疲れ様です 朽木隊長!」
その声に 白哉が何も言わず通り過ぎようとした瞬間 臨はその白い腕を伸ばし 白哉の耳を引っ張った。
「こら白哉!挨拶くらいきちんとしなさい!」
そこまで強くは引っ張っていないのだろう(白哉の表情が変わらないあたり)が 己の上司に向かって容赦なく耳を引っ張るその姿に 若い門番が目を白黒させる。
そして臨はその手を離し 白哉の背をバシンと強く叩いて一歩前へと進ませると ほらと眉を寄せた。
若い門番と 白哉の目が合う。
(ごめん母ちゃん!俺 ここで死ぬかもしれない!)
死を覚悟した門番の目が ギュッと瞑られる。
しかし 次にかけられた言葉に 彼は思わず変な声を上げた。
「…………勤務に励め」
「……へ?」
目を開け 思わず自隊の隊長を凝視する。
その眉間には深々とシワが寄せられているものの、特に怒る様子もない隊長の姿に 彼は敬礼し声を裏返しながら宣言をした。
「が、頑張ります!朽木隊長!!」
「もう少し優しく言えないんですか、お前は」
臨の呆れたような声をよそに 白哉が視線を逸らし先へと進んでいく。
「全く、それじゃあ頑張ってね」
それに臨もついていこうと白哉の背中を追うと、若い門番は膝から崩れ落ち 声を上げた。
「………殺されるかと思ったあ」
「はっはっは!若いなお前は!」
老齢の門番の声が響く。
それに臨はクスクスと笑いながらいると、白哉はそれに視線を向け ふいとまた逸らした。