第260章 ---.赤
ガヤガヤと賑わう野営地を 臨は一瞥すると、彼女は先程の七十番の鬼道を放った 草むらに寝転ぶ男性隊士に近づいた。
「さっきの双蓮蒼火墜は見事でしたね 筑前谷くん」
「臨副隊長!!」
筑前谷と呼ばれた男性隊士の目が 大きく見開かれ 慌てて起き上がる。
「ただ、少し無茶をしすぎです。今回は各班に別れた連携戦。個人が無理をする必要はないのですから……ほら、手を出してください」
臨が筑前谷の手に触れると そっと霊力を込める。
「霊力が枯渇して いざという時に動けなければ意味がないのですからね」
「すいません……」
「わかってくれれば良いのです。ただ 筋は良かったですよ」
その言葉に 筑前谷の顔に笑みが浮かぶ。
「ありがーーー」
「芭蕉副隊長!質問したいことがあるのですが、今よろしいでしょうか!?」
筑前谷が何かを言いかけるが 臨の元へと、隊士が駆け寄る。
「君は……たしか二班の槍使いでしたね。先程の身のこなしはとてもよかったです………それじゃあ、少し離れたところで話しましょうか」
臨が 筑前谷の手を離し 背を向ける。
言いかけた言葉を彼は飲み込むと キラキラとした視線で臨を見つめた。
(初対面の隊員についても、よく観察しその特徴を覚えているのか…………慕われる訳だ)
臨が自身の斬魄刀を、鞘をつけたまま実演と共に隊士と話す。
それを見ていた隊士が臨に質問し、それに丁寧に答えるその姿に、筑前谷は口元に笑みを浮かべた。
(やはり 素晴らしい人物であり 人格者だ………強く 美しく 賢い。更に下を引っ張る程のカリスマ性と、人を見る目が備わっている………………素晴らしい人だ!)