第16章 16.Wasted but Wanted
その様子に肉体の方の彼は突然走り出すと、その虚にもう1発蹴りを入れた。
その反動に手すりの外へと落ちそうになるのを、一護がギリギリで掴み取る。
「何つームチャすんだテメェは!?虚は頭わりゃほっといても消えるんだ!それをわざわざ蹴り上げたりして!何なんだあいつがココに落ちたら困るみてーな……。」
着地点に視線を向けると、そこにあるのは蟻の行列。
「まさか、これを潰さねーようあんなことしたなんて、聖者みてーなコト言うんじゃ」
「そ、そうだよ!悪ィかよ!オレは何も殺さねえんだ!!」
そう言う彼に、一護がハッとする。
「オレが作られてすぐに、尸魂界は改造魂魄の破棄命令を出したんだ。そして作られた次の日には、もう俺は死ぬ日付が決まってた!……オレはあの丸薬の中で毎日怯えてたよ。周りの仲間が1日ごとに減っていくのを見ながら。」
「運良く他の丸薬に紛れて倉庫から抜け出せた後も、いつか見つかって破棄されるんじゃないかってビクビクしてた。ビクビクしてる最中………ずっと考えてたんだ。命なんて他人が勝手に奪っていいもんじゃねえんだって。」
自由に生きて自由に死ぬ権利ぐらいある筈じゃねえかと叫ぶ彼。
「虫だろうが人間だろうが、オレたちだっておなじ……だからオレは殺さねえ。」
俯く彼に、一護が何とも言えない顔をする。直後、そこに現れた人物に二人は驚いた。
「おーやおや、やーーっと見つけたと思ったら、ボロボロじゃないっすか。」
その人物に、彼が怯える。
「こりゃ用意した道具、ほとんどムダになっちゃったっスねぇ。」
「あ………」