第16章 16.Wasted but Wanted
彼に、杖の先が押し付けられる。と同時に、コンコンと何かが飛び出し、肉体が崩れ落ちた。
「なっ」
「さ、任務かんりょー!帰るよみんな!」
背後にいた人物たちがブーブーと文句を言う。
すると一護は叫んだ。
「ちょ、ちょっと待てよ!そいつどうする気だよ!!」
その問いに、下駄に帽子を被った男は当たり前のように答えた。
「どうって、破棄するんですが。」
「な、俺が……見えるんだな…………何者だあんたっ」
「はて、何者と聞かれましても……」
男が手先で遊んでいた物体の感覚が無くなり、ばっと振り返る。
その先には、にこやかな臨が立っており、男は冷や汗を垂らした。
「ただの強欲商人ですよ。客に粗悪品を渡した上に、売った商品を無断で奪い取るような……ね。」
「臨さんっ!ダメっすよそれ取っちゃ!お金は返しますから!」
「必要ないです。私はこの商品で大満足してますから。」
「臨殿!しかし」
「ルキアは少し黙っていて。」
横に控えていたルキアが黙る。
「知りませんよ?面倒なことになったらあたしら姿くらましますからね。」
「面倒なこと……ですか。」
はい、と一護に臨が丸薬を手渡す。
それに一護がお礼を言うと、臨はニコリと笑った。
「礼なら、先ほどいただきましたから。」
「え?」
ころりと丸薬が手のひらで転がる。臨は再び穏やかに笑うと、戻りましょうと一言言った。